1086.終末マンガあれこれ
今日、2014/7/28発売の週刊ヤングマガジンで「彼岸島 最後の47日間」が最終回を迎えた。
今まで一言たりとも触れてこなかった「彼岸島」について書きたくなったのは、過去に例を見ないようなユニークな最終回だったからだ。
御用とお急ぎでないネタバレ上等な諸兄は、ぜひ左下の「続きを読む >>」をクリックしていただきたい。
まずはここまでのあらすじ。
前作「彼岸島」は吸血鬼と化した村人が住む島を訪れた主人公「明」とその仲間が、島に残るわずかな人間と共闘して吸血鬼と命がけで戦う物語。それ以上でもそれ以下でもない、一行で書けてしまうエンターテイメント・ホラーである。
その続編というか、ストーリーは途切れることなく「彼岸島 最後の47日間」と改題したのが本作。吸血鬼達は吸血ウィルスを持った蚊を培養し、それを本土に放つことで日本征服をもくろむ。主人公は相変わらず命がけでこれを阻止しようと奮闘する。
だが明は吸血鬼の親玉「雅」との最後の対決に敗れ、絶望のままに吸血「蚊」を載せた船が出港するのを見送る。これが前回、最終回の一つ前の引き。
そして今回。本土に上陸した吸血鬼達の手により「蚊」は放たれ、東京はたちまち吸血鬼の巣窟となる。
「こうして人類最後の47日間は」「終わりを告げた」のモノローグで完。
何が「ユニーク」なのか、と言うと・・・。
人類が滅亡、あるいはそれに近い状況で終わるBAD END作品(いわゆる終末マンガ)は過去にも多く見てきた。しかし絶望的状況で一週引いておきながらそのまま一ひねりどころか一ヤマもないまま終わった作品と言うのはちょっと記憶にない。明が船を見送ったあと、同じ話で2~3P使って東京滅亡を語るのならまだわかる。ようするに最終回としての「起承転結」の「転」が無いのである。「なんじゃこれは」が素直な感想である。
このまま続編がなければ作者が投げたのだろうが(それにしては東京滅亡の様子がやけに描きこまれた最終回である)、たとえ瀕死の本土に主人公が乗り込んでくる続編「彼岸列島・終わらない夏」が近々始まったとしても、「連載マンガは一話毎にカタルシスが必須」が私の持論である以上、作者の力量を疑わずにおれない。
とはいえ、結論を出すには早計。
とりあえず今夜は「どんな最終回なら納得できた」のかを、過去の「終末マンガ」を反芻しながら考えてみたい。
■デビルマン(永井豪・著)
言わずと知れた終末マンガの傑作。人類は疑心暗鬼による核戦争で自滅。その後、不動明率いるデビルマン軍団とサタン率いるデーモン軍団が激突、両軍ともに全滅。堕天使であるサタンだけが生き残る。
結局地球上の生物は誰も生き残らなかったという意味では救いの無い話なのだが、人類は自業自得なのでやむなしという流れをしっかりと描いており、明がサタンからの「デーモンと共に生きて欲しい」という提案を蹴ってまで戦い、最終的にはサタンの謝罪の言葉を引き出しただけでも、「不動明の闘争」としては勝利だったと言えるのかも知れない。他のデビルマンたちの心情はちょっと気にかかる。
■魔王ダンテ(永井豪・著)
主人公「ダンテ」は悪魔化した地球の先住人類でデビルマンのデーモン(の王)の立場に相当する。オリジナルである昭和版は雑誌の休刊に伴い未完、平成版は完全版ともいえるセルフ・リメイク作品で、ラストでは敵である「神」を宇宙に追放し、神のご加護を失った(我々)人類は滅亡する。ただしこの作品では「神(意思を持ったエネルギー体)」は宇宙から来た侵略者、すなわち「悪」であると明確に定義されているため、終末マンガでありながら「勧善懲悪」モノでもあるわけだ。しかも「神」は地球を去るときに「善」の心を取り戻した描写もあり、大団円に近い。しかし最後はなぜか「その後地球はまともな人間が一人もいない悪魔の星となった」というブラックなオチ。善悪の定義に絶対などないという教訓か。単に豪ちゃんの遊び心か。
■イヤハヤ南友(永井豪・著)
学園内の派閥争いが世界を巻き込んだ核戦争に発展、最終的に人類は絶滅する。実は天使だった主人公は(滅亡を阻止できなかった)罰として人間にされ、新世界の始祖となるが、神様に頼み込んで元のヒロイン(たち)を復活させてイブにするという許されざるハーレムエンド。新世界爆発しろ。ギャグマンガなので他の作品と同列には語れないが、「新世界が始まる」のも「終末マンガ」の1つの可能性である。
■UFOロボ グレンダイザー(桜多吾作・著) 【2016.07.09一部修正】
人類は核戦争(今日三度目)の末滅亡寸前、グレンダイザーは「自らの意思で」デューク、妹のマリアを取り込んで(冷凍睡眠させ)、古代ロボ・ラーガと共に地中深く潜る。ラーガの内部には操縦者の弓さやか(偶然ラーガのライセンスである指輪を拾った)の姿も。
核戦争後も兜甲児と(影は薄いが)本作のヒロイン、牧場ひかるは生き延びており、デュークたちが目覚めるまで生きていこうと誓う。
わずかに希望を残す典型的パターンだがこれが一番好きだ。実写映画「DEVILMAN」のラストにも影響を与えているように思う。 なおアニメや永井豪版はBAD ENDではない。
■ワースト(小室孝太郎・著)
ある日地上に舞い降りた人類の天敵「ワーストマン」。見た目は翼の生えた猿と人の中間的で水中型等、環境に適応したものもいる。夜行性でワーストマンに噛まれた人間はワーストマンになるという典型的ゾンビ(というより吸血鬼)フォーマットであり、その出自は作中でも明らかにされていない。と、ここまではホラー路線だが、人類が何世代にも渡りワーストマンと戦うドラマは生粋のSF作品である。ラストは打ち切りだったのか、人類とワーストマンの決着がつかないまま氷河期がやってきて共倒れ。氷河期の後、わずかに人影が確認されたがそれが人類だったのかワーストマンだったのかは誰も知らない・・という謎だらけの作品。だがその過程はかなりの傑作だった。リメイクが見たい作品ナンバーワン。(ダイナミックプロ関係者ではない。)
(終)
今まで一言たりとも触れてこなかった「彼岸島」について書きたくなったのは、過去に例を見ないようなユニークな最終回だったからだ。
御用とお急ぎでないネタバレ上等な諸兄は、ぜひ左下の「続きを読む >>」をクリックしていただきたい。
まずはここまでのあらすじ。
前作「彼岸島」は吸血鬼と化した村人が住む島を訪れた主人公「明」とその仲間が、島に残るわずかな人間と共闘して吸血鬼と命がけで戦う物語。それ以上でもそれ以下でもない、一行で書けてしまうエンターテイメント・ホラーである。
その続編というか、ストーリーは途切れることなく「彼岸島 最後の47日間」と改題したのが本作。吸血鬼達は吸血ウィルスを持った蚊を培養し、それを本土に放つことで日本征服をもくろむ。主人公は相変わらず命がけでこれを阻止しようと奮闘する。
だが明は吸血鬼の親玉「雅」との最後の対決に敗れ、絶望のままに吸血「蚊」を載せた船が出港するのを見送る。これが前回、最終回の一つ前の引き。
そして今回。本土に上陸した吸血鬼達の手により「蚊」は放たれ、東京はたちまち吸血鬼の巣窟となる。
「こうして人類最後の47日間は」「終わりを告げた」のモノローグで完。
何が「ユニーク」なのか、と言うと・・・。
人類が滅亡、あるいはそれに近い状況で終わるBAD END作品(いわゆる終末マンガ)は過去にも多く見てきた。しかし絶望的状況で一週引いておきながらそのまま一ひねりどころか一ヤマもないまま終わった作品と言うのはちょっと記憶にない。明が船を見送ったあと、同じ話で2~3P使って東京滅亡を語るのならまだわかる。ようするに最終回としての「起承転結」の「転」が無いのである。「なんじゃこれは」が素直な感想である。
このまま続編がなければ作者が投げたのだろうが(それにしては東京滅亡の様子がやけに描きこまれた最終回である)、たとえ瀕死の本土に主人公が乗り込んでくる続編「彼岸列島・終わらない夏」が近々始まったとしても、「連載マンガは一話毎にカタルシスが必須」が私の持論である以上、作者の力量を疑わずにおれない。
とはいえ、結論を出すには早計。
とりあえず今夜は「どんな最終回なら納得できた」のかを、過去の「終末マンガ」を反芻しながら考えてみたい。
■デビルマン(永井豪・著)
言わずと知れた終末マンガの傑作。人類は疑心暗鬼による核戦争で自滅。その後、不動明率いるデビルマン軍団とサタン率いるデーモン軍団が激突、両軍ともに全滅。堕天使であるサタンだけが生き残る。
結局地球上の生物は誰も生き残らなかったという意味では救いの無い話なのだが、人類は自業自得なのでやむなしという流れをしっかりと描いており、明がサタンからの「デーモンと共に生きて欲しい」という提案を蹴ってまで戦い、最終的にはサタンの謝罪の言葉を引き出しただけでも、「不動明の闘争」としては勝利だったと言えるのかも知れない。他のデビルマンたちの心情はちょっと気にかかる。
■魔王ダンテ(永井豪・著)
主人公「ダンテ」は悪魔化した地球の先住人類でデビルマンのデーモン(の王)の立場に相当する。オリジナルである昭和版は雑誌の休刊に伴い未完、平成版は完全版ともいえるセルフ・リメイク作品で、ラストでは敵である「神」を宇宙に追放し、神のご加護を失った(我々)人類は滅亡する。ただしこの作品では「神(意思を持ったエネルギー体)」は宇宙から来た侵略者、すなわち「悪」であると明確に定義されているため、終末マンガでありながら「勧善懲悪」モノでもあるわけだ。しかも「神」は地球を去るときに「善」の心を取り戻した描写もあり、大団円に近い。しかし最後はなぜか「その後地球はまともな人間が一人もいない悪魔の星となった」というブラックなオチ。善悪の定義に絶対などないという教訓か。単に豪ちゃんの遊び心か。
■イヤハヤ南友(永井豪・著)
学園内の派閥争いが世界を巻き込んだ核戦争に発展、最終的に人類は絶滅する。実は天使だった主人公は(滅亡を阻止できなかった)罰として人間にされ、新世界の始祖となるが、神様に頼み込んで元のヒロイン(たち)を復活させてイブにするという許されざるハーレムエンド。新世界爆発しろ。ギャグマンガなので他の作品と同列には語れないが、「新世界が始まる」のも「終末マンガ」の1つの可能性である。
■UFOロボ グレンダイザー(桜多吾作・著) 【2016.07.09一部修正】
人類は核戦争(今日三度目)の末滅亡寸前、グレンダイザーは「自らの意思で」デューク、妹のマリアを取り込んで(冷凍睡眠させ)、古代ロボ・ラーガと共に地中深く潜る。ラーガの内部には操縦者の弓さやか(偶然ラーガのライセンスである指輪を拾った)の姿も。
核戦争後も兜甲児と(影は薄いが)本作のヒロイン、牧場ひかるは生き延びており、デュークたちが目覚めるまで生きていこうと誓う。
わずかに希望を残す典型的パターンだがこれが一番好きだ。実写映画「DEVILMAN」のラストにも影響を与えているように思う。 なおアニメや永井豪版はBAD ENDではない。
■ワースト(小室孝太郎・著)
ある日地上に舞い降りた人類の天敵「ワーストマン」。見た目は翼の生えた猿と人の中間的で水中型等、環境に適応したものもいる。夜行性でワーストマンに噛まれた人間はワーストマンになるという典型的ゾンビ(というより吸血鬼)フォーマットであり、その出自は作中でも明らかにされていない。と、ここまではホラー路線だが、人類が何世代にも渡りワーストマンと戦うドラマは生粋のSF作品である。ラストは打ち切りだったのか、人類とワーストマンの決着がつかないまま氷河期がやってきて共倒れ。氷河期の後、わずかに人影が確認されたがそれが人類だったのかワーストマンだったのかは誰も知らない・・という謎だらけの作品。だがその過程はかなりの傑作だった。リメイクが見たい作品ナンバーワン。(ダイナミックプロ関係者ではない。)
(終)
コメント
桜多吾作版グレンダイザーラスト
>あのにますさん
コメントありがとうございます。
コミックスを確認し、記事を修正しました。
さやかはミケーネ帝国を訪れたとき指輪を拾っていたんですね。その辺りのいきさつがすっぽり記憶から抜け落ちていました。逆に子供の頃はさやかがラーガの操縦士になったのは偶然以外の(さやかの出自に関わるような)理由があるような妄想に囚われていたのですが、今見返すと単なる偶然、おそらくは「甲児とさやかを分かつ」演出上の事情ですね。
コミックスを確認し、記事を修正しました。
さやかはミケーネ帝国を訪れたとき指輪を拾っていたんですね。その辺りのいきさつがすっぽり記憶から抜け落ちていました。逆に子供の頃はさやかがラーガの操縦士になったのは偶然以外の(さやかの出自に関わるような)理由があるような妄想に囚われていたのですが、今見返すと単なる偶然、おそらくは「甲児とさやかを分かつ」演出上の事情ですね。
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同系統の滅びた地球の先史文明の超ロボット「ナーガ」だったと思います。名称うろ憶え…m(_ _)m